2009年03月02日

夜の会

 夜が降っている。
 屋根をたらりと濡らし、雨樋の中を垂れてゆく。
 僕はカーテンのない窓から、夜が降り続けるベランダを見ている。
 ガラスに遮られて音は聴こえず、窓越しに降る雨の姿を見ている。
 なにを見ているの、と声をかけられた。
 夜を見ている、と応えた。
 彼女は不審そうな顔をする。僕はまた夜を見る。彼女も夜を見ていることが気配で伝わった。
 頭の中の音楽が徐々に徐々に大きくなり、オーケストラになろうとしている。
 僕はオーケストラをお裾分けしようと彼女の手を握る。
 彼女の頭の中には巨大なキャンバスが立てかけられていて、それが見えない筆によって少しずつ色付けされているところだった。
 僕は絵の完成を待ちながら、オーケストラの山場を聴く。
posted by clown-crown at 01:34| パリ | TrackBack(0) | グチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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